村井 淳志
集英社 (2005/08)
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複数人のチームでひとつのものを作るプロジェクトを進めるなかで、ものごとを決定していく方法を考えるのに参考となる一冊かもしれない。
「脚本家・橋本忍の世界 (集英社新書)」によれば「我が青春に悔いなし」から「乱」に至る、戦後から最晩年の直前までの黒澤作品は、シナリオライターとの「共同脚本」によって生まれ、この「共同脚本」は、言葉は同じでも黒澤組の場合、とても特異なスタイルだったという。
本書は、その共同執筆で黒澤映画の脚本に多大な貢献をしたという橋本忍さんへのインタビューを通して、橋本氏の業績を評価しようとしている。
その共同執筆の方法とは以下のようなものだ。
まず、黒澤監督と組んだライターが第一稿を書く。次に、3人のライターを招聘。同じシーンを「別々に」「同時に」書き、最後に黒澤が第一稿よりもいいと思う語り口があればそれをどんどん部分的に採用していき、つなげるのだという。
聞くとただのツギハギのようだが、まとめ方が肝心。最終的には黒澤氏が判断していたといい、橋本氏は黒澤氏もたぐいまれなシナリオライターの才があるからこそ、なりたったシステムと言い切る。
共同執筆がうまく機能したのは「七人の侍」までだったそうだ。共同執筆は、非常にシナリオができあがるまでに非常に時間がかかるシステムだったとのことで、橋本氏は当時所属していた会社からは、共同執筆より、1人でシナリオを書くように求められていたという。そのほうが売上げ的にはいいから。
その後、黒澤氏からは、その後、第一稿なしの「いきなり共同討議方式」への参加を求められたが、あまり積極的には参加しなかったらしい。
共同脚本のポイントは、プロがタタキとなる第一稿をつくる/複数人のプロが同じものをそれぞれ自分なりにリライトする/リーダーがまとめる/時間を惜しまない、といったこと。
本書は、続く章で、他の橋本シナリオについても検証していて、読み応えあり。
ただ、1点だけ残念だったのは、インタビュー文が期待したよりも少なかったこと。冒頭で著者が橋本氏に会うまでのドキドキが綴られている割に、かぎかっこつきの橋本氏のことばが少なかったのが残念だった。